
警備業の苦情処理簿とは|記載事項と受付から改善までの書き方
警備業の苦情処理簿とは|記載事項と受付から改善までの書き方
警備業の苦情に関する書類には、申出人の氏名・連絡先、苦情内容、原因究明、弁明、改善措置、担当者名を記録して営業所に備え付けます。
一般に「苦情処理簿」と呼ばれますが、警備業法施行規則はその名称や全国共通の様式を定めていません。また、苦情を適切に解決する努力と、所定事項を記録した書類を営業所に備える義務は、根拠条文が異なります。
この記事では、受付から事実確認、原因究明、弁明、改善、終結までを6段階に分けます。法定記載事項と会社が追加する管理項目、法令で一律年数が示されていない保存期間、警備HUBの情報を確認材料にする範囲まで整理します。
警備業の苦情に関する書類とは

苦情解決の努力義務と備付書類の違い
警備業法第20条は、警備業者が、その行う警備業務について依頼者などから寄せられた苦情を適切に解決するよう常に努めることを定めています。これは苦情への対応姿勢と解決努力を定める規定です。記録用紙の名称や処理期限を定める条文ではありません。
一方、警備業法第45条は営業所ごとの書類備付けを求め、警備業法施行規則第66条第1項第8号が苦情に関する書類の記載事項を具体化しています。したがって、電話で説明して解決しただけで記録を残さない運用や、書類だけ作って改善措置を進めない運用では、二つの役割を十分に果たせません。警備業法で会社が守る義務と合わせて、対応と記録を分けて管理します。
記録対象と法定記載事項の早見表
警備業法施行規則第66条第1項第8号が求めるのは、苦情を申し出た者の氏名と連絡先、苦情の内容、原因究明の結果、苦情に対する弁明の内容、改善措置、苦情処理を担当した者の氏名です。受付時に分かる情報と、調査・対応後に確定する情報を分け、進行に応じて更新します。
| 記録事項 | 確定する時点 | 記録の要点 |
|---|---|---|
| 申出者の氏名・連絡先 | 受付時 | 取得できた事実を残す |
| 苦情の内容 | 受付時 | 申出内容を評価せず記録する |
| 原因究明の結果 | 調査後 | 確認資料と結び付ける |
| 弁明の内容 | 説明時 | 誰が何を説明したか残す |
| 改善措置 | 対応決定後 | 実施内容と確認担当を分ける |
| 担当者の氏名 | 担当決定時 | 引継ぎ後も履歴を残す |
契約書類や他の備付書類との位置付けは警備業の備付け書類・帳簿一覧で確認できます。
苦情を受けてから記録する手順

申出人・連絡先・内容を事実として受け付ける
受付時は、申出者が話した内容と受付担当者の評価を混ぜません。氏名、連絡先、受付日時、対象となる契約先・現場、発生したとされる日時と場所、具体的な申出内容を、確認できた範囲で記録します。受付日時や現場などは会社が事実確認を進めるための補助項目であり、第66条第1項第8号が列挙する法定6項目とは区別します。
匿名や連絡先不明の申出でも、取得できない情報を推測して埋めないことが重要です。「氏名不明」「折り返し不可」など、取得できなかった事実を会社の統一表記で残し、内容と対応を受付番号で追えるようにします。個人情報は苦情対応に必要な担当者だけが閲覧できる権限にします。
原因・弁明・改善措置・担当者を記録する
受付後は、契約条件、配置、勤務実績、巡回報告、警備報告書、関係者の説明などを確認し、原因究明の結果を記録します。確認できた事実、当事者の説明、担当者の評価を別の欄に分けると、推測が確定事項に置き換わるのを防げます。
弁明は、申出者へ伝えた会社側の説明内容を記録します。改善措置は「注意した」で終えず、何を変更し、誰が実施し、誰が完了を確認するかを具体化します。処理担当者が途中で変わったときは、前任者を消さず、引継日と新しい担当者を履歴として残します。
苦情記録を終結まで管理する

事実と評価を分け、対応状況を更新する
苦情記録は、受付、事実確認、原因究明、弁明、改善、終結という状態で管理します。申出内容は「申出者の主張」、現場資料で確認できた内容は「確認事実」、原因に関する見解は「評価」として分けます。確認前の推測を原因究明の結果欄に確定表現で残さないようにします。
| 状態 | 主な作業 | 完了条件 |
|---|---|---|
| 受付 | 氏名、連絡先、内容を記録 | 受付担当と受付時刻が分かる |
| 事実確認 | 契約・現場・報告を確認 | 確認済み事実を区別できる |
| 原因究明 | 事実から原因を整理 | 根拠となる記録が結び付く |
| 弁明 | 会社の説明を記録 | 説明者と内容が分かる |
| 改善 | 措置を実施 | 実施者と確認者が分かる |
| 終結 | 結果を確定 | 残課題と再確認日が明確になる |
この状態遷移表は、警備業法第20条と警備業法施行規則第66条第1項第8号を、受付から終結までの実務に対応させたものです。終結後に再発や追加申出があれば、元の受付番号と結び付けて再開します。
保存期間を社内規程で定め、検索可能にする
警備業法施行規則第66条第2項は、警備員名簿、第4号の指導計画書、第5号の教育計画書、第6号の教育実施記録について保存期間を定めていますが、第8号の苦情書類は対象に含めていません。したがって、同項を根拠に「苦情記録は一律に何年間」と断定することはできません。
会社は、契約条件、紛争対応、個人情報、再発防止に必要な期間を確認し、社内規程で保存期間と廃棄手順を決めます。受付番号、契約先、現場、発生日、担当者、状態で検索できるようにし、期間中は変更履歴も保持します。電子記録の条件は警備業の法定書類を電子化する条件で整理しています。
契約先・現場情報と対応履歴を整理する

警備HUBの契約・現場・監査ログを参照情報にする
警備HUBでは、契約先、現場、契約台帳、隊員、配置、巡回報告、警備報告書PDF、監査ログ、カスタム項目を管理できます。苦情の事実確認時に、対象契約、現場、当日の配置、日常報告、業務データの変更履歴を探す材料として利用できます。警備の契約書・契約種別管理も合わせると、契約条件との照合がしやすくなります。
ただし、警備HUBに苦情受付・苦情処理の専用機能や、苦情書類の自動生成機能はありません。申出内容、原因究明、弁明、改善措置、担当者は別途記録し、会社の責任で終結まで管理します。
契約先・現場・担当・変更履歴を整理する警備HUBの機能は、資料で確認できます。
よくある質問

苦情処理簿という決まった名称・様式ですか
警備業法施行規則第66条第1項第8号は記載事項を定めていますが、「苦情処理簿」という名称や全国共通の様式は定めていません。名称ではなく、申出者の氏名・連絡先、苦情内容、原因究明、弁明、改善措置、担当者名が記録されているかを確認します。
会社独自の用紙や電子様式を使うときは、受付時に未確定の欄と、調査後に確定する欄を分けます。記録事項が揃い、営業所で必要時に確認できる状態を維持してください。
匿名の苦情は記録しなくてよいですか
警備業法施行規則第66条は、匿名苦情を一律に記録対象外とする規定を置いていません。氏名や連絡先を取得できないときは、架空の情報で埋めず、取得できなかった事実と申出内容、受付日時、対応経過を社内ルールに沿って残します。
連絡先がなく結果を伝えられないときも、事実確認、原因究明、改善措置が必要かを会社が判断します。匿名であることだけを理由に、現場の安全や契約履行に関わる申出を未処理にしない運用が大切です。
苦情記録の保存期間は何年ですか
警備業法施行規則第66条第2項は、第8号の苦情に関する書類について一律の保存期間を定めていません。名簿や教育関係書類の1年・2年という期間を、そのまま苦情書類へ流用しないでください。
保存期間は、契約上の要請、紛争対応、個人情報の保持目的、再発防止に必要な期間を確認し、社内規程で定めます。法定期間と誤表示せず、起点、期限、延長の承認、廃棄方法まで明文化します。
まとめ
警備業の苦情に関する書類には、警備業法施行規則第66条第1項第8号が定める6項目を記録します。警備業法第20条の解決努力と、営業所に記録を備える義務を分け、受付から終結まで状態を更新してください。
同条第2項は苦情書類の一律保存期間を示していないため、会社は根拠を確認して社内規程を定めます。警備HUBの契約・現場・日常報告・監査ログは事実確認の材料になりますが、苦情専用機能ではありません。
関連記事: 警備業の備付け書類・帳簿一覧 / 警備の契約書・契約種別管理 / 警備業法で会社が守る義務 / 警備業の法定書類を電子化する条件
対応確認に必要な業務データを探しやすく
警備HUBは、契約先・現場・配置・日常報告・変更履歴を一元管理し、事実確認に必要な情報を整理します。
監修:依田 尚人(警備HUB 開発責任者)。警備実務の専門家への取材・助言を経て警備HUBを開発し、その業務知見をもとに本記事を確認しています。
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